一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」設立宣言
私たちは本日、2009年10月9日、一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」が適法な手続きを踏んで設立されたことを、ここに宣言する。
2年ほど前の2007年8月9日、ヨーロッパの短期金融市場(インターバンク市場)から突然資金が蒸発し、世界を横断して経済を支配し振り回してきた巨大な金融バブルが破裂した。膨張に膨張を重ねてきた信用は、この金融バブルの破裂を契機に急収縮を開始し、連動して、世界の実体経済も急収縮を開始した。アメリカを先頭に、世界各国の主要政府はこの急収縮を押しとどめるために、巨額の財政出動に乗り出している。しかし、今般破裂した金融バブルはあまりにも巨大であった。世界の主要政府がその国家財政を投げ打って押しとどめようとしても、埋めることが出来ないほどだったのである。
そして、この巨大な金融バブルの破裂は今、世界経済恐慌に転化する恐れすら出てきた。中国やインドがこれを挽回するかもしれないという主要政府の期待は幻想に終わる可能性がある。そうなれば、先進国では職を失った労働者が路頭をさまよう事態になるだろう。また、新興国では資金が枯渇し、経済活動そのものの途絶が避けられなくなるだろう。そして、世界の至るところで力のない子ども、女性、老人、障がい者などが、飢餓に苦しめられることになるだろう。
貨幣と信用は経済の成長と発展に不可欠なものである。そして、経済の成長と発展は、人間の生活の安寧に不可欠である。その意味で、貨幣と信用は、人間の生活の安寧に不可欠である。問題は、貨幣と信用が自走し、人間がこれに同調し、世界と世界経済とを破壊してしまったことである。すなわち、問題は、人間が貨幣と信用の言葉で語り、人間の言葉を見失っていることにある。
人間はしかし、今、助け合い、慈しみあい、やわらかく、しなやかな連帯関係の中に生きるほかはないことをようやく発見しようとしている。本日、 北の市民と南の民衆が助け合い、慈しみあい、やわらかく、しなやかに連帯する一つの試みとして、一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」が誕生したことがその表れである。人間は、これからは貨幣と信用の言葉から解放され、助け合いと慈しみあいの言葉、すなわち、人間の言葉を新しく紡(つむ)ぎだしていくことによってしか生きることができない。
私たちは、人間が助け合いと慈しみあいの中に生きる未来を信じる。そして、本日誕生した一般社団法人「アジア民衆基金」に集い、背筋を伸ばし、連帯して、毅然と前に歩んでいくであろう。確かに、「互恵のためのアジア民衆基金」が当面なしうることは、悲しいほどにわずかである。人間の貧しい言葉が招来した世界恐慌が、音を立てて、世界中で人間の生活を破壊し尽くそうとしている中で、私たちがなしうることは本当にわずかである。しかし、私たちは、わずかであっても、なしうることを全力でなしていきたい。そして、そうした私たちの懸命な取り組みをとおして、私たちが掲げる人間連帯の灯火が、将来、世界の人々の希望を照らすものになるだろうことを確信する。
以上、宣言する。
2009年10月9日
設立総会参加者一同