設立趣意書

一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」 設立趣意書

人間の言葉の貧しさは、自然を破壊し、南を搾取・収奪し、人が住む地域を解体し、女たちを虐げてきた。特に、人間の言葉の貧しさがもたらした地球温暖化の進行と世界恐慌の可能性は今後、世界中の貧しくて弱い者たちに最大の犠牲を強いようとするであろう。

私たちはこの現実を直視しつつ、生命と寄り添い、生命とともに生きていく立場から、自然と人、南と北、人と人、女と男の共生が、今こそ求められていると確信する。私たちはまた、進行する地球温暖化から地球を救い、搾取・収奪されている南を救い、世界恐慌発生の可能性と、恐慌の発生にともなう戦争の可能性から世界の人々を救う主体は、南の民衆と北の市民の連帯にほかならないと確信する。何故なら、南の豊かで多様な有機性が、北の無機性の中に胚胎されるべき有機性の根拠となり、その一方で、北の無機性が産み出した富が、南の豊かな有機性の中に隠されている残酷を取り除いていかない限り、人間が真に豊かになることはないはずであるからである。

私たちはそうした立場から、20数年前、フィリピン(ネグロス)の民衆を飢餓から救うためのマスコバド糖やバナナの民衆交易から出発し、その後の20年余の時間経過の中で、南の民衆と北の市民の間に、アジアにおける広範な民衆交易網を築いて来た。すなわち、日本・韓国―フィリピン(ネグロス)、日本・韓国―パレスチナ、日本―インドネシア・東チモール・パキスタンなどである。

しかし、それは残念ながら、日本や韓国を中心とし、かつ、対角線的に形成された関係にとどまっている。すなわち、フィリピン(ネグロス)とパレスチナ・インドネシア・東チモール・パキスタンなどの間に、相互交流も連帯も具体的には存在しない。私たちはしたがって、この対角線的な関係をネットワーク化し、南の民衆と北の市民の相互交流・連帯網に発展させることが求められていると考える。
また、私たちの民衆交易網は、南の物産の手工業的な生産と、これの北との手工業的な交易活動にとどまっている。私たちはしたがって、南の多様な可能性の芽を育み、私たちの民衆交易事業の総合的な成長・発展に資するための、民衆による互恵的な金融事業の構築が求められていると考える。
私たちは、この二点の必要を解決することを直接的な契機として、今般、一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」を設立することとした。

振り返れば、アジアはアフリカ・ラテンアメリカと並んで、長らく欧米の金融的な支配と抑圧の下に置かれてきた。また、国際連帯も、長らく欧米の専売特許にとどまり、アジアはインターナショナルをその手にすることはなかった。

私たちはしかし、今、一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」の設立をとおして、アジア的広がりにおいて、国際連帯をその手にしようとしている。私たちはまた、今、一般社団法人「互恵のためのアジア民衆基金」の設立をとおして、アジアの自立のための、金融という新しいツールをその手にしようとしている。

自立したアジアは、ヨーロッパの市民と、そしてアメリカの市民と連帯する。また、自立したアジアは、アフリカやラテンアメリカの民衆と、そして世界の民衆と連帯する。そして世界は、その有機性と無機性が相互に補い合うことをとおして、着実に、かつ、真に豊かになっていく。

その意味において、私たちの今回の一歩は、明らかに小さな一歩にすぎない。私たちはしかし、この小さな一歩が、分断された世界を友情で結び、人間を真に解放していく第一歩になるものと確信する。

関係各位のご理解とご協力を心からお願いする。

以上

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